第128章

酒井初音の声音は急き立てるでもなく、かといって緩みすぎてもいない。声量も大きくないのに、どこか投げやりで悠然とした気配だけが、じわりと滲んでいた。

久世美月は、頭から足先まで冷水をぶちまけられたみたいにぞくりとした。冷えが骨の髄まで染みて、全身が粟立つ。

本来なら、詰問する勢いのまま初音の茶卓へ突っ込んだはずだった。けれど今は――その勢いを支える気力が、ぷつりと切れている。

怖い。

自分よりもさらに深い腹を持つ「同類」と初めて出会ったときの、あの本能的な恐怖。

美月は唇を震わせ、白くなるほど拳を握りしめた。ふと目を上げた瞬間、酒井初音の頬に広がっていたはずのアレルギーの赤い湿疹が―...

ログインして続きを読む